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大阪高等裁判所 昭和49年(ネ)263号 判決

控訴人 浅田孝三郎 外一名

被控訴人 渡辺清 外一名

主文

一  原判決を次のとおり変更する。

二  (1) 控訴人浅田孝三郎と被控訴人渡辺繁との間において、同控訴人が別紙物件目録(一)記載の(ロ)(ハ)(チ)(リ)(ヌ)(ル)の各不動産について一〇〇分の八宛の各持分を、同控訴人と被控訴人渡辺繁、同渡辺清との間において、同控訴人が同目録(一)記載の(イ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)(オ)(ワ)(カ)(ヨ)(タ)(レ)(ソ)(ツ)(ネ)(ナ)(ラ)(ム)の各不動産について一〇〇分の八宛の各持分を、それぞれ有することを確認する。

(2) 控訴人渡辺義夫と被控訴人渡辺繁との間において、同控訴人が同目録(一)記載の(ロ)(ハ)(チ)(リ)(ヌ)(ル)の各不動産について一〇〇分の四宛の各持分を、同控訴人と被控訴人渡辺繁、同渡辺清との間において、同控訴人が同目録(一)記載の(イ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)(オ)(ワ)(カ)(ヨ)(タ)(レ)(ソ)(ツ)(ネ)(ナ)(ラ)(ム)の各不動産について一〇〇分の四宛の各持分を、それぞれ有することを確認する。

(3) 被控訴人両名は、控訴人両名に対し、同目録(一)記載の(イ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)(オ)(ワ)(カ)(ヨ)(タ)(レ)の各不動産についてそれぞれ前記(1)(2)項の各割合に応じた共有持分の各移転登記手続をせよ。

三  控訴人両名の主位的請求およびその余の予備的請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は第一、二審を通じてこれを一〇分し、その七を控訴人両名の負担とし、その余を被控訴人両名の負担とする。

事実

第一当事者の求めた判決

(控訴人ら)

一  原判決を取消す。

二  主位的請求

(1) 控訴人両名が別紙物件目録(一)記載の(イ)ないし(ム)の各不動産についてそれぞれ六分の一宛の各共有持分を有することを確認する。

(2) 被控訴人両名は、控訴人両名に対し、同目録(一)記載の(イ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)(オ)(ワ)(カ)(ヨ)(タ)(レ)の各不動産についてそれぞれ六分の一宛の共有持分の各移転登記手続をせよ。

三  予備的請求(当審において、控訴人浅田孝三郎につき請求を拡張、同義夫につき請求を減縮。)

(1) 控訴人浅田孝三郎と被控訴人渡辺繁との間において、同控訴人が同目録(一)記載の(ロ)(ハ)(チ)(リ)(ヌ)(ル)の各不動産について一〇分の一宛の各持分を、同控訴人と被控訴人渡辺繁、同渡辺清との間において、同控訴人が同目録(一)記載の(イ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)(オ)(ワ)(カ)(ヨ)(タ)(レ)(ソ)(ツ)(ネ)(ナ)(ラ)(ム)の各不動産について一〇分の一宛の各持分を、それぞれ有することを確認する。

(2) 控訴人渡辺義夫と被控訴人渡辺繁との間において、同控訴人が同目録(一)記載の(ロ)(ハ)(チ)(リ)(ヌ)(ル)の各不動産について一〇〇分の七宛の各持分を、同控訴人と被控訴人渡辺繁、同渡辺清との間において、同控訴人が同目録(一)記載の(イ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)(オ)(ワ)(カ)(ヨ)(タ)(レ)(ソ)(ツ)(ネ)(ナ)(ラ)(ム)の各不動産について一〇〇分の七宛の各持分を、それぞれ有することを確認する。

(3) 被控訴人両名は、控訴人両名に対し、同目録(一)記載の(イ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)(オ)(ワ)(カ)(ヨ)(タ)(レ)の各不動産についてそれぞれ前記(1)(2)項の割合に応じた共有持分の各移転登記手続をせよ。

四  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人両名の負担とする。

(被控訴人ら)

一  本件控訴をいずれも棄却する。

二  控訴費用は控訴人両名の負担とする。

第二当事者の主張

(請求原因)

一  主位的請求原因

(一) 訴外亡渡辺仙太郎は、別紙物件目録(一)記載の(イ)ないし(ム)の各不動産(以下「本件各不動産」という。また、各不動産につき(イ)ないし(ム)の呼称をふして表示する。)を所有していたが、昭和三九年五月二一日作成の公正証書(以下「本件公正証書」という。)による遺言により、本件各不動産のうち、(ロ)(ハ)(チ)(リ)(ヌ)(ル)の各不動産(田、畑)を被控訴人繁に、(イ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)(オ)(ワ)(カ)(ヨ)(タ)(レ)(ソ)(ツ)(ネ)(ナ)(ラ)(ム)の各不動産を持分各二分の一の割合で被控訴人両名に、それぞれ遺贈した。

(二) 仙太郎は同年同月二五日死亡し、同人の相続人は訴外渡辺幸男、同上田きぬ、控訴人両名、被控訴人両名である。

(三) 被控訴人両名は、同年八月一二日、本件各不動産のうち、(イ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)(オ)(ワ)(カ)(ヨ)(タ)(レ)の各不動産について遺贈を原因とする持分各二分の一の移転登記を経由した。

(四) (1) 仙太郎は、右遺言当時、脳軟化症により後記のとおり言語を発しがたいのは勿論、その精神状態も朦朧として事理を弁識する意思能力を有していなかつたものであるから、前記遺言は無効である。

(2) また、本件公正証書による遺言は、遺言者仙太郎の公証人に対する遺言の趣旨の口授がないから、重大な方式違背があつて無効である。

すなわち、本件公正証書作成時、仙太郎は、言語がやや不明瞭という域を超えた失調性言語障害者であり、長年にわたつて附添つて看護してきた訴外大森キヨのみがようやくその言わんとするところを理解しえたのであり、右大森に対しても、同女が問直したり念を押すと、これに応じて首を振るなどの挙動を示すのみであり、言語で答えるということはなかつた。したがつて、公証人が仙太郎に対して直接発問し、仙太郎が言葉で話すということもなかつたもので、もつぱら大森が、右両者の間の取次をして遺言の内容とするものを伝え、公証人がこれを筆記しただけであり、これでは遺言の内容の真正な任意性を担保することはできない。しかも、公正証書による遺言の場合の口述については、一般に通訳によることは許されないものと解すべきであるから、本件公正証書による遺言についても、大森の介添的通訳は認めらるべきでない。また、本件(ツ)の不動産は、従前から控訴人義夫が居住している家屋で、その敷地は仙太郎が生前同控訴人に贈与してその所有権移転登記がなされており、本件(ネ)(ナ)(ラ)(ム)の各不動産は、前記遺言当時、祖先の祭祀の承継者である長男の幸男が居住中で渡辺家の母家であり、その敷地は仙太郎が生前幸男に贈与してその所有権移転登記がなされているものであつて、仙太郎が右各物件を被控訴人両名に遺贈するなどということは常識上考えられないこと、さらに、本件(リ)(ヌ)の各不動産はいずれも幸男および控訴人孝三郎が耕作中であること、のみならず、仙太郎は、他に亀岡市にも山林(別紙物件目録(二)の(1)ないし(6))、京都市右京区内にも保安林(同目録(二)の(7)ないし(9))を有しているのに、これらの山林九筆のことは全く前記遺言でふれない結果となつており、京都市右京区役所に備え付けの固定資産課税台帳記載の本件各不動産だけを拾いあげて慌てて前記遺贈の対象にした感がある。以上は、仙太郎に思慮分別がなかつたことの何よりの証左であるばかりでなく、被控訴人両名と気脈を通じていた大森の前記介添的通訳に作為があつたことを示すもので、本件公正証言による遺言は、仙太郎の真意が確保されているとはいえず、仙太郎の公証人に対する直接的口授により作成された遺言でないこと明らかである。

(3) 公正証書作成にあたつては、嘱託人が公証人法三二条二項の規定により立会人として請求した場合のほかは、嘱託人の雇人または同居人は立会人となれない旨定められているのに(公証人法三四条三項六号)、本件公正証書は、同居人にして雇人である大森を立会人として作成されているから、無効というべきであり、したがつて、本件遺言も無効である。

(4) 大森は真実は立会人にすぎないものであり、したがつて、公証人法三六条九号で要求されるとおり同人を立会人として記載をすると、結局証人が訴外東良義雄一人のみとなつて、証人二名以上の立会を必要とする、公正証書遺言の方式を欠く結果となるので、大森を証人として虚偽の記載をして本件公正証書を作成したものであるから、本件公正証書は無効というべきであり、したがつて、本件遺言も無効である。

(5) 本件各不動産のうち、(ロ)(ハ)(チ)(リ)(ヌ)(ル)の各農地の遺贈について本件公正証書を作成するにあたつては、公証人は、知事の許可があつたことを証すべき証書を提出せしめて右許可を証明せしめるべきであるのに(公証人法三三条一項)、全くその手続を欠いているから、同法二六条、二条により、本件公正証書はその成立上無効というべきであり、したがつて、右農地に関する本件遺言も無効である。

(五) よつて、控訴人両名は、本件各不動産につき、相続によりそれぞれ六分の一宛の各共有持分を取得したので、被控訴人両名に対し、右各共有持分を有することの確認を求めるとともに、本件各不動産のうち、(イ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)(オ)(ワ)(カ)(ヨ)(タ)(レ)の各不動産について右各共有持分の移転登記手続をなすことを求める。

二  予備的請求原因

(一) 本件公正証書による遺言が有効であるとしても、本件遺贈は控訴人らの遺留分を害するものであるから、控訴人両名は、自己の遺留分を保全するため、昭和四〇年五月二四日付の本件訴状により前記遺贈につき減殺の意思表示をし、同訴状は同年六月一日被控訴人両名に送達された。

(二) そして、遺留分算定の基礎となる財産額のうち、前記遺贈対象外の遺産は別紙一覧表1に、被控訴人両名に対する前記遺贈物件は同一覧表2に、被控訴人繁に対する前記遺贈物件は同一覧表3に、特別受益は同一覧表4に、それぞれ記載のとおりであり、遺留分減殺に関する計算関係は別紙計算書の控訴人らの主張欄に、右に関する補足的主張は別紙説明書の控訴人らの主張欄に、それぞれ記載のとおりである。

(三) 前記減殺の意思表示により、控訴人孝三郎は、本件各不動産のうち、被控訴人繁に遺贈された(ロ)(ハ)(チ)(リ)(ヌ)(ル)の各不動産について一〇分の一の各持分を、被控訴人両名に遺贈された(イ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)(オ)(ワ)(カ)(ヨ)(タ)(レ)(ソ)(ツ)(ネ)(ナ)(ラ)(ム)の各不動産について一〇分の一の各持分を、控訴人義夫は、前同(ロ)(ハ)(チ)(リ)(ヌ)(ル)の各不動産について一〇〇分の七の各持分を、前同(イ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)(オ)(ワ)(カ)(ヨ)(タ)(レ)(ソ)(ツ)(ネ)(ナ)(ラ)(ム)の各不動産について一〇〇分の七の各持分を、それぞれ取得した。

(四) そこで、控訴人孝三郎は、被控訴人繁および被控訴人両名に対して予備的請求の趣旨(1)項記載の各持分を、控訴人義夫は、被控訴人繁および被控訴人両名に対して同(2)項記載の各持分を、それぞれ有することの確認を求め、控訴人両名は、被控訴人両名に対し、それぞれ同(3)項記載の各共有持分の移転登記手続をなすことを求める。

(答弁)

一  主位的請求原因に対する答弁

(一) 主位的請求原因(一)ないし(三)の各事実は認める。

(二) 同(四)の(1)(2)の事実のうち、本件公正証書による遺言時、遺言者仙太郎が意思能力を有しなかつたこと、仙太郎の公証人に対する遺言の趣旨の口授がなかつたことはいずれも否認し、その余の事実は後記の主張に反する点は争う。

仙太郎は、口頭で直接公証人に遺言の趣旨を述べたもので、その際、言語がいささか明瞭を欠いたため、それを聞きなれている大森が通訳的介添をしたことは事実であるが、一般に外国語による遺言の口授が通訳を介してなされても有効であると解されていることに徴しても、大森の通訳的介添があつたからといつて、有効な口授がなされたことまで否定することはできない。幸男は、仙太郎の老後の生活の面倒をみる約で同人からそれに十分な不動産等を贈与されていたが、その後、仙太郎と不仲となつて右約束を履行しなかつたため、仙太郎は、幸男にこれ以上多くの財産を与える必要はないとの考慮から、幸男が居住使用している本件(ネ)(ナ)(ラ)(ム)の不動産についても前記遺贈の対象にしたものである。また、仙太郎は控訴人義夫に本件(ツ)の不動産を贈与しようとしたところ、同控訴人は、他から入れ知恵されて、右贈与を受けると相続のとき不利益になるものと思い込んで右贈与を拒んだため、仙太郎の怒りをかつていたものであり、そのせいもあつて、仙太郎は右不動産を被控訴人両名に遺贈したのである。しかも、仙太郎の死亡時、同人の遺産は、本件各不動産のみでなく、他に別紙物件目録(二)記載の各不動産があつたのである。のみならず、被控訴人清はタクシー運転手として自立しており、同繁は末子として仙太郎に可愛いがられ、被控訴人両名は仙太郎の病状を気づかつて始終同人宅に出入していたものであるから、被控訴人両名が前記遺贈を受くべき理由は十分に存したのである。

(三) 同(四)の(3)ないし(5)の各事実は争う。

二  予備的請求原因に対する答弁

(一) 予備的請求原因(一)の事実のうち、本件遺贈が控訴人両名遺贈分を害することは否認する。

(二) 同(二)の事実についての認否および主張は別紙一覧表1ないし同一覧表4、別紙計算書、別紙説明書の被控訴人らの各主張欄に記載のとおりである。

(三) 同(三)の事実は否認する。

理由

第一主位的請求について

一  主位的請求原因(一)ないし(三)の各事実は当事者間に争いがない。

二  本件公正証書による遺言の効力について判断する。

(一)  控訴人らは、本件公正証書による遺言は、遺言者仙太郎が当時意思能力を有していなかつたから無効である旨、また、仙太郎の公証人に対する遺言の趣旨の口授がなかつたから無効である旨主張する。成立に争いがない甲第七号証の一、二、第八号証、原審証人本多芳郎、同西野亮一、同東良義雄、同上田きぬ、同松本きみ、同大森キヨ(第一、二回)、原審および当審における証人渡辺幸男(当審は第一回)、控訴人浅田孝三郎、同渡辺義夫、当審における被控訴人渡辺繁、同渡辺清(第一回)の各供述を総合すれば、次の事実が認められる。

(1) 仙太郎は、昭和三二年妻の小菊が死亡してから長男幸男夫婦と京都市内の本件(ネ)の建物(本宅)に同居し、昭和三四年頃から脳軟化症に罹患し、言葉の呂律がまわりにくかつたり、寝たり起きたりの生活をするようになつていたが、創価学会の信者でもあつたところから、同じ信者の大森キヨと知合となつて、同年一一月頃同市内の野々宮町の別宅に単身移るととともに、右大森を家政婦として雇つて同居するようになつた。右別居の因となつたのは、本宅より右別宅の方が仙太郎の病気の治療に便であることのほか、右大森を家政婦として身の回りの世話をさせるためであつた。それまでに、長男の幸男が仙太郎と一緒に林業や農業に従事してきたこともあつて、仙太郎は、幸男の稼働ないしは同人の資金による援助を考慮して、同人に財産を分配してその所有名義にしたものもあつたが、その余の不動産の権利証、実印等は仙太郎において保管していた。右別居の際、幸男は、仙太郎に対して同人の生活費、医療費の仕送りをすることのほか、家政婦の日当も支払うことを約していた。

(2) 右別居後、幸男は、仙太郎の生活費、医療費の仕送りをし、家政婦の日当を支払つていたが、その後、被控訴人繁が仙太郎と一時同居していた折、同被控訴人と財産上のことで喧嘩したことから、前記約に反して仙太郎への右仕送りをしなくなつたこともあつて、仙太郎は、幸男に裏切られたと怒つており、幸男に財産を多く与えすぎたとか、その一部を取戻したいなどと不満を娘きぬ、大森に洩らしていた。その頃、仙太郎は、歩行ができずに体が不自由で臥床して大森に付添われて生活していたが、精神的には格別異常はなく、意識もはつきりしていて判断力もあり、前記の言語障害の点についても、聞きなれた家政婦や仙太郎の息子、娘などはその発声の意味を了解できないわけではなく、現に昭和三五年六月には被控訴人清に同人が現に居住の宅地建物を、同三六年五月頃には被控訴人繁に現金二三〇万円を、同三九年一月頃には娘の上田きぬに現金八〇万円を、それぞれ贈与するなどした。仙太郎の前記症状は漸次進行してはいたが、同人の発声について判りにくいところは大森が介添して通訳できるところであつた。

(3) 仙太郎は、平素から、幸男に財産を多く分配しすぎたから、同人にこれ以上財産を与える必要はないばかりでなく、同人が弟の控訴人孝三郎の財産的な面倒をみるべきであり、控訴人義夫についても結婚問題や財産問題などとかく不信感を抱いていたし、また同人の妻が仙太郎の許に出入しないなどしたことから同控訴人に財産を分けなくてもよい旨述べていた。かくて仙太郎は、前記のように、被控訴人両名に財産の一部を贈つたりしていたが、昭和三九年五月、かねてから知合の谷口司法書士らと相談して遺言書を作成することになり、同月二一日、嘱託人仙太郎の依頼により公証人本多芳郎が本件公正証書を作成するため仙太郎宅に赴いた。当日、遺言者仙太郎、証人として東良義雄、大森キヨが立会い、被控訴人両名も同席していたが、右公証人は、仙太郎の枕もとが隣室との間の敷居近くであつたので、仙太郎から一寸離れた位置の隣室に座つていた。仙太郎は、体が動けなくて仰臥したままで右公証人に応対したが、意識は相当確かであり、ただ、当時は失調性の言語障害があつて、公証人の質問に対して身振りを交えながら口頭で申述したものの、言語がいささか不明瞭で右公証人には判りにくいところがあつたので、仙太郎の発言を平生から聞きなれてその意味を了解しうる大森が、仙太郎の意向により、その通訳をしてこれを公証人に伝えた。このようにして、仙太郎は、本件各不動産を記載した紙を予め用意していたので、右紙に記載した本件各不動産のうち、農地である(ロ)(ハ)(チ)(リ)(ヌ)(ル)の各不動産を被控訴人繁に、(イ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)(オ)(ワ)(カ)(ヨ)(タ)(レ)(ソ)(ツ)(ネ)(ナ)(ラ)(ム)の各不動産を持分各二分の一の割合で被控訴人両名に、それぞれ遺贈する旨の遺言をした。右公証人は、筆記した右遺言者の口述内容を仙太郎のそばで右遺言者および各証人に読み聞かせたところ、仙太郎はその意味を了解して頷くように首を振つて口頭でこれを承認し、各証人も筆記の正確なことを確認した後に署名押印し、右遺言者は自身で執筆ができなかつたので、右公証人が代署して押印し、もつて、本件公正証書が作成せられた。なお、仙太郎は、右遺言後二、三日は病状に格別変化はなかつたが、同月二四日頃から意識の混濁がみられるようになり、同月二五日容態が急変して死亡した。

以上(1)ないし(3)のとおり認めることができる。右認定に反する前示証人渡辺幸男、控訴人孝三郎、同義夫の各供述部分は前示各証拠と対比して措信しがたく、また、前示証人西野亮一の供述により成立を認める甲第五号証のうち前記認定に反する記載部分は、同証人の供述によれば、控訴人孝三郎に依頼されて同控訴人の兄弟間の争いをなくするためそのように書いてくれと言われ、同控訴人の言うままに記載したもので、事実に合致しないものであることが認められるから(この認定に反する原審における控訴人孝三郎の供述部分は措信することができない。)、甲第五号証の右記載部分は採用することができない。

前記認定事実によれば、本件遺言当時、仙太郎は、脳軟化症による運動機能の障害や失調性の言語障害が存したけれども、意識は確かで判断力もあり、自己の行為の結果を認識しうる精神的能力である意思能力を有したものというべきであり、また、公証人に対する遺言内容の伝達も、単に身体の挙動のみで肯定・否定の意を表明したものではなく、自らその趣旨について口述しており、ただ、前記の言語障害によりその言語が言葉として明瞭を欠くところもあつたため、平生から右遺言者の発言を理解しうる大森の介添的な通訳がなされたのであり、しかも、右遺言の応答は、公証人との間に他の近親者等が介在して誘導的質問をしてこれを公証人に伝えた事跡はなく、遺言者は直接公証人に口述した形をとつており、その間にあつて、前記のように大森が通訳したにすぎず、他に、公証人が遺言者の挙動の趣旨を誤解したり、公証人によつて遺言者の意思が左右されたり、あるいは、遺言者が口頭で直接公証人にその意思を伝達することが阻害されたような特段の状況も存しないから、本件公正証書による遺言においては、有効な口授があつたものと解するのが相当である。被控訴人らは、本件公正証書による遺言につき、大森がしたような介添的通訳は許されない旨主張するが、元来、遺言の方式につき厳格性が要求されるのは能う限り遺言者の真意を確保しようとするところにその趣意が存するのであるところ、前記認定のような大森の介添的通訳は、遺言者の意思を不明確のまま放置することを避けるためには必要であるのみならず、遺言者の真意を害わない程度のものであるから(本件においては右真意を害うべき作為的事情の存することは認めるに足りない。)、右遺言の効力を左右するものではないと解しなければならない。

もつとも、前示証人渡辺幸男、控訴人孝三郎、同義夫の各供述によれば、本件(ネ)ないし(ム)の各建物は、仙太郎も曽て居住していた母屋であり、同人の長男幸男がその家族とともに居住し、その敷地は仙太郎の生前に同人から幸男に贈与されて幸男所有名義の登記がなされているにもかかわらず、本件(ネ)ないし(ム)の各建物を前記遺贈の対象物件としていること、本件(ツ)の建物は控訴人義夫が仙太郎の生前に分家したときから居住し、同建物の敷地は仙太郎の生前に同人から控訴人義夫に贈与されて同控訴人の所有であるにかかわらず、本件(ツ)の建物を前記遺贈の対象物件にしていること、仙太郎は、他に亀岡市保津町にも山林(別紙物件目録(二)の(1)ないし(6))を、京都市右京区にも保安林(同目録(二)の(7)ないし(9))を所有しているにもかかわらず、これらの山林については本件遺言で全く觸れていないこと、以上の各事実が認められるが、前示証人上田きぬ、同大森キヨの各供述によれば、仙太郎と幸男とは、本件公正証書作成当時、不仲であつたのみならず、前記のように、仙太郎は、幸男に財産を多く与えすぎたとして、その取戻しを考えていたことが認められるから、仙太郎が本件(ネ)ないし(ム)の各建物を本件遺贈の対象物件とすることもありえないことではないし、その余の前記各物件に関する各事実も、それらの事実があるからといつて、前記に認定した仙太郎と幸男および控訴人らの間に存した事情などから考えると、仙太郎が右各物件を本件遺贈の対象物件にしたこと、もしくは対象物件にしなかつたことにつき、特に不合理・不自然とみなければならないわけのものではない。それ故、前記各事実は、仙太郎が意思能力を有しなかつたこと、および本件公正証書による遺言に口授がなかつたことの根拠とすることはできず、前記認定の妨げとなるものではない。

(二)  控訴人らは、本件公正証書は、同居人にして雇人である大森キヨを立会人として作成されているから、公証人法三四条三項六号に違反して無効である旨主張するが、前記認定のとおり、大森キヨは本件遺言の証人であつて、前示甲第八号証および本多芳郎の供述によれば、本件公正証書の作成には、右大森を遺言の証人として立ち会わせたもので、正規の立会人とされたものではないことが認められるから、右主張は失当というべきである。

また、控訴人らは、大森キヨは立会人にすぎないのに、同人を証人として本件公正証書に虚偽の記載をしたものであるから、本件公正証書は無効である旨主張するが、右大森が名実ともに本件遺言の証人であることは前記に認定したとおりであるから、同人を証人として本件公正証書に表示したことは虚偽記載でないことが明らかであり、右主張も採用することができない。

さらに、控訴人らは、本件各不動産のうち農地の遺贈について公正証書を作成するにあたつては、知事の許可があつたことを証すべき証書を提出せしめるべきであるのに、その手続を欠いているから、公証人法三三条一項、二六条、二条により、本件公正証書は無効である旨主張するが、前記のような相続人に対する農地の遺贈の場合には、その所有権移転につき農地法三条の許可は要しないものと解せられるから、そうである以上、本件公正証書作成にあたり、知事の許可を証すべき証書を提出せしめる必要はないものであつて、右主張も失当として排斥を免れない。

三  そうすると、本件公正証書による遺言は有効というべきであつて、これが無効であることを前提とする控訴人らの主位的請求は、さらに判断するまでもなく、その理由がないものといわなければならない。

第二予備的請求について

一  仙太郎が、本件公正証書による遺言により、本件各不動産のうち、(ロ)(ハ)(チ)(リ)(ヌ)(ル)の各不動産を被控訴人繁に、(イ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)(オ)(ワ)(カ)(ヨ)(タ)(レ)(ソ)(ツ)(ネ)(ナ)(ラ)(ム)の各不動産を持分各二分の一の割合で被控訴人両名に、それぞれ遺贈したことは前述のとおりであり、控訴人両名が昭和四〇年五月二四日付の本件訴状により前記遺贈につき減殺の意思表示をし、同訴状が同年六月一日被控訴人両名に送達されたことは本件記録上明らかである。

二  そこで、遺留分算定の基礎となる財産額について判断する。

(一)  被相続人仙太郎において相続開始時有していた財産であつて本件遺贈の対象外となつている物件が別紙一覧表1の物件名欄記載の(1)ないし(10)の各不動産であることは当事者間に争いがなく、当審における、証人渡辺幸男(第二回)、控訴人孝三郎の各供述によれば、同(11)の不動産は、幸男が昭和三四年頃買受けて所有権を取得した物置であつて、訴外清滝荘に賃貸していることが認められ、右認定を動かすに足りる証拠もないので、右物件は仙太郎の遺産ではないものといわなければならない。本件相続開始時において、右(1)ないし(6)の各山林の土地の各価格が控訴人ら主張の各価格であること、(4)(5)(7)(9)の各山林の立木の各価格が控訴人ら主張のとおり零であることは当事者間に争いがなく、成立に争いがない甲第一〇号証によれば、右(1)ないし(3)の各山林の立木の各価格は昭和四九年一〇月当時控訴人ら主張の各価格であることが認められるが、右立木価格は相続開始時である同三九年五月当時の価格によるべきものと解せられるので、同号証は直ちに採用することができないところ、成立に争いがない乙第四号証の一、二によれば、木材と同製品の卸売物価指数は、昭和四〇年度を一〇〇とするとき、同三九年度は九九・八、同四五年度は一三八・五であり、同四五年度を一〇〇とするときは、同四九年度は一六四・八であることが認められるから、同四九年度は同三九年度に比して少くとも約二倍値上りしていること明らかであるが、右指数が立木でなくて木材と同製品の卸売についてのものであることを考慮しても、立木についての物価指数の上昇率も右に準じて大差はないものと認むべきであるから、本件相続開始時の右(1)ないし(3)の各山林の立木の各価格は、昭和四九年度価格の二分の一に相当する各価格、すなわち、(1)については一三万四〇〇〇円、(2)については二万八〇〇〇円、(3)については一〇万五〇〇〇円をもつて相当と認める。右(6)の山林の立木の価格については、前示甲第一〇号証と当審証人渡辺幸男(第二回)の供述によれば、右山林の立木は、昭和三五年に一旦は伐採されてその跡に苗木を植えたが、その後の手入が悪くて殆どが枯れてしまい、その価格は零であることが認められ、右認定を動かすに足りる証拠はない。右(7)(9)の各山林(保安林)の土地の価格については、成立に争いのない甲第二号証の二によれば、右山林の近くに所在する別紙物件目録(一)記載の(ヨ)の山林の昭和四〇年度の固定資産評価額が一坪当り約二円であることが認められるから、同山林の当時の時価は少くともその二倍の一坪当り約四円であると認めるを相当とするところ、右(7)(9)の各山林が保安林であつて、その所在地等に徴すれば、保安林の指定の解除や伐採の許可は容易に得らるべくもないことが推認せられるから、これを斟酌すると、特別の立証もない本件においては、本件相続開始時の右(7)(9)の各山林の土地の価格は、一坪当り二円と認めるのが相当であり、(7)については一八一五円、(9)については一二〇円の各価格となる。右(8)の山林(保安林)の土地の価格については、成立に争いのない甲第二号証の二によれば、右山林に準ずべき別紙物件目録(一)記載の(オ)の山林の昭和四〇年度の固定資産評価額が一坪当り約一七・六円であることが認められるから、同山林の本件相続開始当時の時価は少くともその二倍の一坪当り約三五・二円であると認めるを相当とするところ、右(8)の山林が保安林であつて前同様の事情の存することが推認せられることを考慮すると、格別の立証もない本件においては、本件相続開始時の右(8)の山林の土地の価格は、一坪当り一七・六円と認めるのが相当であり、したがつて、一六万九一八八円の価格となる。右(8)の山林の立木の価格については、成立に争いのない甲第九号証、乙第五号証によれば、右立木量は、昭和四九年当時、松が五九二・四五立方メートル、雑木が四〇三・九二立方メートル、杉が一七五立方メートルであること、立木一石あたりの価格は、松が二〇〇〇円、杉が一五〇〇円、雑木は零であることが認められるから、当時の立木価格は、一立方メートルが三・五九石として、松が四二五万三七九一円(592.45/3.19×2000)、杉が九四万二三七五円(175/3.59×1500)、計五一九万六一六六円となるところ、昭和三九年当時の右立木の価格は、前述のように、昭和四九年当時の右立木価格の二分の一とするを相当とするから、結局二五九万八〇八三円となるが、右(8)の山林が保安林であつて前同様の事情の存することが推認せられることを斟酌すると、格別の立証もない本件の場合、本件相続開始時の右立木価格は一二九万九〇四一円と認めるのが相当である。右(10)の建物については、前示甲第二号証の一によれば、右建物と同番地上に所在する別紙物件目録(一)記載の(ネ)の建物の昭和四〇年度の固定資産評価額が一八万三九〇〇円であることが認められるから、右建物の当時の時価は少くともその二倍の三六万七八〇〇円であると認めるを相当とするところ、当審証人渡辺幸男の供述(第二回)によれば、右(ネ)の建物が母屋であるのに比し、右(10)の建物は当時老朽していてその後の昭和五〇年五月頃には取壊したことが認められるから、本件相続開始当時の(10)の建物の価格は一二万円と認めるのが相当である。

(二)  前記のように、被控訴人両名に対する本件遺贈の対象物件は別紙一覧表2の物件名欄記載の(イ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)(オ)(ワ)(カ)(ヨ)(タ)(レ)(ソ)(ツ)(ネ)(ナ)(ラ)(ム)の各物件であるところ、右(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)(オ)(ワ)(カ)の各山林の土地および右(ソ)(ネ)(ナ)(ラ)(ム)の各建物の本件相続開始時の各価格が控訴人ら主張の各額であること、本件相続開始時の右(イ)(ニ)(ホ)(ト)の各山林の立木の各価格がいずれも零であることは当事者間に争いがない。本件相続開始時の右(イ)(ヨ)(タ)(レ)の各山林の土地、(ツ)の建物の各価格は前示甲第二号証の一、二によつて認められる昭和四〇年度の各固定資産評価額の少くとも二倍の価額と認めるを相当とするから、右各山林の土地の価格は、(イ)が七万円、(ヨ)が一五万二〇〇〇円、(タ)が七万六〇〇〇円、(レ)が三万円の各価格となり、(ツ)の建物の価格は一二万四〇〇〇円となる(右(イ)が七〇〇〇円、(ヨ)が一万五二〇〇円、(タ)が七六〇〇円、(レ)が三〇〇〇円、(ツ)が一万二四〇〇円という控訴人らの主張は当事者間に争いがないごとくであるが、前示甲第二号証の一、二に照らせば、控訴人らの右主張は右各数額について単位の誤記をしていること明らかであるので、右自白にはよらないこととする。)。次に、前示甲第九号証によれば、昭和四九年度の右(ヘ)(オ)(ワ)(カ)(ヨ)(タ)(レ)の各山林の立木の各価格はいずれも控訴人ら主張の各額であることが認められるが、前述のとおり、昭和三九年度の立木の価格は同四九年度の価格の二分の一と認めるを相当とするから、本件相続開始時の右各山林の立木の価格は、(ヘ)が四万五〇〇〇円、(オ)(ワ)が計四〇八万一〇〇〇円、(カ)が六〇万円、(ヨ)が三五万六二五〇円、(タ)が八〇万二五〇〇円、(レ)が二六万二五〇〇円の各価格となる。

(三)  被控訴人繁に対する本件遺贈の対象物件が別紙一覧表3の物件名欄記載の(ロ)(ハ)(チ)(リ)(ヌ)(ル)の各不動産であることは前記のとおりであるところ、右各不動産の本件相続開始時の価格が控訴人ら主張の各額であることは当事者間に争いがない。

なお、控訴人らは、右各不動産は農地であるところ、本件遺贈について知事の許可がないから、所有権移転の効力を生じない旨主張するが、前記で判断したとおり、相続人に対する農地の遺贈の場合は、その所有権移転について知事の許可を要しないと解すべきであるから、右主張は採用することができない。

(四)  特別受益については、別紙一覧表4のうち、(1)の控訴人孝三郎の現金、(2)の控訴人義夫の宅地、(3)の訴外上田きぬの現金、(4)の被控訴人清の宅地および建物につき、本件相続開始当時の各受益額が控訴人ら主張の各額であることは当事者間に争いがない。成立に争いがない甲第一二、一五号証、当審における控訴人孝三郎の供述により成立を認める同第一七号証、当審における証人渡辺幸男(第二回)、被控訴人清(第二回)の各供述によれば、仙太郎は、被控訴人繁に対し、昭和三六年五月頃現金二三〇万円を贈与し、次いで、同三九年一月一八日に同一覧表4の(5)記載の山林を贈与して、登記上は仙太郎から同被控訴人に対する売買を原因とする所有権移転登記を経由したこと、右山林の本件相続開始時の受益額は少くとも昭和四〇年度の固定資産評価額の二倍である一四万五四〇〇円を相当とすることが認められる。被控訴人らは、右山林は被控訴人繁が代金四〇万円で仙太郎から買受けた旨、また、贈与を受けた前記現金については、その後、同被控訴人が仙太郎のために耕運機、人夫賃の代金を支出したので、同被控訴人と仙太郎との間で改めて右現金の贈与がなかつたことにする旨の合意が成立した旨主張し、当審において同被控訴人は右主張に副う供述をするけれども、右供述部分は前示各証拠と対比して措信しがたく、また、被控訴人繁の右供述により成立を認める乙第二号証の一ないし五、第三号証の一、二の各記載も、前示の証人渡辺幸男と被控訴人清の各供述によれば、仙太郎が被控訴人繁の友人に貸した金の返済を受けた際の領収書が乙第二号証の一ないし五であること、乙第三号証の一、二は右山林の売買代金の領収書ではないことが認められるから、右乙号各証はいずれも被控訴人繁の右主張事実を認める証拠として採用することができない。

三  そこで、遺留分による減殺額とその割合を算出すると、別紙計算書のうち当裁判所の算定欄記載のとおりとなることが明らかであり、前記減殺の意思表示により、本件各不動産のうち、控訴人孝三郎は、被控訴人繁に遺贈された(ロ)(ハ)(チ)(リ)(ヌ)(ル)の各不動産について一〇〇分の八の各持分を、被控訴人両名に遺贈された(イ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)(オ)(ワ)(カ)(ヨ)(タ)(レ)(ソ)(ツ)(ネ)(ナ)(ラ)(ム)の各不動産につき一〇〇分の八の各持分を、被控訴人義夫は、前同(ロ)(ハ)(チ)(リ)(ヌ)(ル)の各不動産につき一〇〇分の四の各持分を、前同(イ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)(オ)(ワ)(カ)(ヨ)(タ)(レ)(ソ)(ツ)(ネ)(ナ)(ラ)(ム)の各不動産につき一〇〇分の四の各持分を、それぞれ取得したものというべきである。

四  そうすると、被控訴人らがこれを争う以上、控訴人孝三郎は、被控訴人繁および被控訴人両名に対し、前記各物件につきそれぞれ一〇〇分の八の各持分を、控訴人義夫は、被控訴人繁および被控訴人両名に対し、前記各物件につきそれぞれ一〇〇分の四の各持分を、有することの確認を求めうるものであり、また、控訴人両名は、被控訴人両名に対し、本件各不動産のうち(イ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)(オ)(ワ)(カ)(ヨ)(タ)(レ)の各物件につき右記載の各割合の共有持分の移転登記手続を求めうるものといわなければならない。

第三結語

以上説示したとおりであるから、控訴人両名の本訴請求は、予備的請求について主文二項に記載の限度で正当としてこれを認容すべきであるが、主位的請求とその余の予備的請求についてはいずれも失当としてこれを棄却すべきものである。よつて、これと異なる原判決を右のとおり変更することとし、民訴法九六条、九三条、九二条、八九条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 唐松寛 裁判官 奥輝雄 野田殷稔)

別紙〈省略〉

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